溺愛パンデミック

奇跡が消えないように 僕等が生きた証を ここに記そう

アングラな舞台「歌喜劇/市場三郎~温泉宿の恋」(※感想には個人差があります。)

はじめに…

・全て個人的な感想です。

・内容にネタバレを含みます。

以上をご理解いただいた上で、お読みくださいますようお願い申し上げます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アングラ。アンダーグラウンド

ウィキペディア先生に聞いてみるとこんな答えが返ってきました。

 

この舞台の名前を聞いたときには、はまちゃんらしいほのぼのした恋愛系の舞台だとばっかり思っていました。温泉に行った先で美しい女性と出会い恋に落ちる。イエス、フォーリンラブ。みたいな。歌喜劇という聞きなれない言葉ながらもミュージカルだと思ってたし喜劇だから楽しいんだろうなとしか、思ってなかったのですが。

いざ出来上がったポスターを見て不思議な感覚に陥りました。あれ、思ってたのと全然違う。それだけじゃなくて、謎の既視感。懐かしい?何となく昭和の香り漂う…でも私一応平成生まれです。いつもたくさんの人に疑われるけど本当に戸籍上平成生まれです。そんな私の感じた謎の違和感、劇場で解決しました。

1回で良いから見に行きたいと、友人と応募したら友人が東京千秋楽を当ててくれました。神様仏様友人様。しかも真ん中らへんのとても見やすい席。大好き。

グローブ座にお邪魔するのはこれで2回目。MORSEは暗くてシリアスな舞台だったので皆神妙な面持ちで席についていたような気がするのですが、今回は和気あいあいと。劇場内に足を踏み入れた時、感動しました。まるで…一種のテーマパーク。

2階席、3階席の突出した部分、軒の所に暖簾と提灯が飾ってある。色は緑や赤やら。舞台上には大きな画面があって、その後ろに版画のような建物の背景があって、両サイドには大きな立て看板のようなものがありました。まるで昭和の映画の看板みたいなタッチで出演者が描かれていて、それを囲むように光るオレンジのネオン。どっからどう見ても、

「…昭和だ。(心から漏れた声)」

そこで私が一番最初に思い出したのが…申し訳ありません、花園神社の見世物小屋でした。(知らない人は検索してもいいですが、所謂アングラ苦手な方にはお勧めいたしません。)古き良き…日本の…うん、何でもない。

ジャニオタさんなら分かりやすいのが味園ビルとか?大阪なら…新世界とか…?お世話になってる新宿ゴールデン街もそうだし、思い出横丁とかもそんな気がする。伝われ。

でもまあ言ってしまえばアングラに多少なりともかすっているとは思うんです、今挙げた全て。私、アングラってエログロだけじゃないと思うんですよ。言い方を変えればディープスポットのような。で、この舞台の主に色味がそれと綺麗に重なってしまったんですよね、私の目で見たら。

 

少し話が脱線してしまうんですが、女性と男性で比較した場合、男性より女性の方が色に敏感だそうです。例えば合コンのように男女を3:3で向かわせてある程度雑談をしてもらう。その後、後ろを向いてもらってお互い向かいに座っていた人の服装を問うと、女性はかなり正確に覚えているそう。

かく言う私も何故か人を色で見たり考えたりする習性があります。オーラが見えるとか、そういう超人的な事ではなく、「この人は白と黄色のグラデーションみたいな人」とか「この人はパステルの紫でラメと濃い青の線」とか。意味が分からないと思う人が多数だとは思うのですが、何故か色を考えてしまうのです。

 

で、話は戻って。だから所謂アングラの色味が一致してたんですよね、この舞台で使われるセットやら衣装やらの色味と私が見てきたアングラなものの色味が。それに、観劇を終えて帰宅して気付いてしまったら、内容もアングラに思えてきて仕方が無かったのです。あれだけ笑いを取っておきながら、よくよく考えれば登場人物の闇がそれぞれに深すぎる。深読みしすぎだとか考えすぎだとかという意見はごもっともですが、一旦それは置いておいて、暫し「アングラだという体で見た市場三郎」の感想にお付き合いください。(前置き長い。)

 

 まずはじめに、それぞれの登場人物の設定をざっくりまとめてみましょう。

・市場三郎(主人公)…市場生まれ。その為朝に強い。下ネタが苦手で純粋の塊みたいな発言ばっかりするくせに、上の兄がエリート、下の兄がオネエになった為に父親から期待をかけられ血を吐くまで発声練習させられるという苦行を伴うかなり濃い環境で成長している。なんか荷物運ぶ仕事してるけど一本鞭で叩かれる、まるでエジプトの奴隷。

・三郎が恋する女性…ドイツに旅立った恋人にそっくり。昼はヤギの飼育員、夜はスナックと枕営業と芸者を掛け持ちしてる闇の深い超人。生まれたばかりの子ヤギをポーチに入れたり着物の裾に入れて持ち歩く。仮にも嫁の自分を枕営業に駆り出すクズの旦那を何故か愛している。ニートの長男(にしてはかなりお年を召して…)と野球やってる次男(もなかなか…)がいる。

・上司…仕事の時に部下を鞭で操る女王様。長いものには巻かれたり、調子がいい時には大口叩いたりする、よく見るめんどくさい上司。

・同僚1…やたら秘宝館に行きたがるヤバいヤツ。

・同僚2…唯一の少しまともな人。三郎が新しい恋に目覚めるように応援している。

・妖精…髭面のホットパンツとサングラス。形を変えたレイザーラモンHG

…こんな所ですか。随所に色々と沢山人は出てくるんですが、書ききれません。しかし皆さま考えても見てほしい。登場人物にはびこる闇の数々。三郎の職場、ブラックどころかTシャツに書かれた番号で呼ばれてるんですよ…?1836…懲役なの?動物園に行けば動物を家畜扱い。それから賭け卓球に枕営業、ぼったくりに警察との癒着、3か所しか回らないお遍路…目白押しだな!人間はみな誰しも闇をかかえて生きていると思っていますが、笑いの中からたまに顔を出すこの深い闇。ご覧になった方は、思い返せばさぞ感じていたことと思います、これらの深い闇。

次に、この劇中に何度も出てくる「秘宝館」。同僚1がかなり行きたがるんですが、三郎にじゃんけんで負けて動物園に。けれど諦めきれない同僚1、劇中で何度も「秘宝館!」と口にします。いやいや…皆さま秘宝館ってご存知?現在は全国で1か所しかないそうですが、昔はあれが色んなところにあったらしいですね。バブルって怖い。秘宝館なんてアングラの象徴、権化、そのものに他ならない気がするのは私だけ?ディープスポットなんて可愛いもんじゃなかろう…。そんな秘宝館に行きたい同僚1の心の闇もかなり深い気がします。

そして、他ならないシュールな表現。例えば風や波…劇中では効果音は一切使わず全て演者の声だけで表現していたかと思います。「ザザー…」とか。歌もアカペラな訳ですが、そのシュールさと雰囲気、この独特の世界観こそが正にアングラではないかと。シーンの転換の際、2度ほどあった三郎が夢でも見ていたかのようなシーン。台詞で言うと「いつまでここを空港(温泉宿)だと思ってる!」の所ですね。他のシーンが暗転したり歌に入ったり着替えで転換するといった流れ作業のような転換と違って、ここはスパン、とまるで包丁を入れられたかのように変わる。

歌喜劇の時点でそうですけど、これこそまさにアウトサイダーアール・ブリュット、それが分かりやすく可視化して具現化したのでは。そして喜劇といいつつ人間の深い闇を織り交ぜることによってアングラ要素を含み、さらにあのセットの色味からアングラ度が増したのではないか。

しかしながら…闇があるからこそ笑える。これもアングラの特徴ではないかと考えます。最初に例に出した見世物小屋だって、闇をかかえたショーな訳で。人間は自分の内に秘めた闇を持っているからこそ他人のそれが見たくなるし気になる。そして笑ってしまうのです、「分かる分かる」とか「私よりましだわ」とか「ありえないだろう」とか「可哀そう」とか。可哀そう。他人の不幸は蜜の味とかいうしね…。

あとは闇とまでは言わないけど小ネタが多すぎて。多分拾えてない、私が知らないネタも詰め込まれまくってたんだと思う。それも広義でのアングラに入れてもいいと思う。

今更ですけど完全にここまで勝手且つ適当な深読みです。おそらく転球さんはじめ関係者の皆さま方は純粋に喜劇を作っただけかと思います。

 

まあ、あのー、言っても1回しか見れなかったので。詳細を細かく覚えてるわけでもないし、もっと言えば真面目なシーンでも後ろでうろちょろしてたり情報量が多すぎて最初の5分ぐらいは口開けっ放しで追いつくのに大変だったから、これが全てという訳でもないんですけど。まーあ面白かった!笑いすぎて周りの人に迷惑かけてないか心配なぐらい笑った。涙流して笑った。素晴らしかった。幸せでした。

という訳で、東京公演おつかれさま、そして千秋楽おめでとうございました。残りの大阪公演も、皆様怪我なく無事に終わりますように。座長はまちゃん、がんばれ!

 

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

色んな意味で申し訳ございませんでした。笑