溺愛パンデミック

奇跡が消えないように 僕等が生きた証を ここに記そう

魔法少女なかま☆ジュンタ 第8話「オレって、ほんまドジ」

まどマギ第8話パロディ(適当)です。ネタが分かる心の広い方だけどうぞ。

 

 

「やり方さえ分かれば、結構簡単なんやな。これなら負ける気せえへんわ。」

入手したグリフシードを、流星は望に投げ渡した。

「やるわ、それが目的なんやろ?」

「おい…」

「望に仮は作らへん。これでチャラ、ええな?」

簡単、と言ったものの流星の足取りは覚束なく、そのまま淳太の腕の中に倒れ込んでしまう。

「あ、ごめん…ちょっと疲れた…」

「無理せんと掴まって。」

淳太に体を支えられその場を去る流星に、

「あのアホ…」

望の声は、届かなかった。

 

「流星…あんな戦い方ないって…」

淳太が流星にそう言うが、流星の表情は硬い。

「痛みを感じられない何て嘘やろ。見てるだけで痛かったし。」

淳太は泣きそうだった。流星は、どうしてこんなに必死に戦うのだろうと。

「ああでもしなければ勝てへん。オレには才能がないから。」

と自嘲気味に流星は言った。

「例えそんな方法で勝っても流星のためにはならへんよ。」

淳太が言うと、

「オレのためにってなんやねん…」

流星は苦しそうに吐き出した。

「こんな姿にされた後で、何がオレのためになんねん。今のオレは魔女を殺す、それしか意味がない石ころなんや。死んだ体を動かしているふりをしているだけなんや。」

「でもオレはどうしたら流星が幸せになれるかって…」

「だったら淳太が戦ってや…」

「え…」

「誰よりも才能あるんやろ?オレみたいな苦労をしなくても簡単に魔女をやっつけられるやろ?」

あのときアイツは言っていた。中間淳太魔法少女の才能があると。

「淳太だったら簡単に魔女を倒せるんやろ?オレのために何かしようっていうんやったら、オレと同じ立場になってみろよ」

けれどその言葉に、淳太は反論することも賛同することもできなかった。流星はまるで吐き捨てるかのように続ける。

「無理やろな。ただの同情で人間をやめられるわけないもんな。」

「同情なんて、そんな…」

「なんでも出来るくせに、何もしない淳太のかわりにオレがこんな目に合ってんねん。それを棚にあげて知ったようなこと言わんとって。」

流星は立ち上がった。淳太も立ち上がろうとすれば、

「ついてこんとって」

そう言って、呆然と立ち尽くす淳太を置いて流星は1人雨の中に走り去って行ったのだった。

 

雨に打たれながら、流星は涙を止めることが出来なかった。

「アホやなあオレ。何てこと言うたんやろ…もう救いようがないな…」

彼のソウルジェムは着々と蝕まれ、濁っていくのだった。

 

望は崇裕の家にいた。

ワルプルギスの夜の出現予測は、この範囲。」

「根拠は?」

と聞く望に、

「統計や。」

と崇裕。

「以前にワルプルギスが来たなんて聞いてへんで。どうやって統計取れんねん?」

その問いに、崇裕は答えない。崇裕によれば、確実にこの日にワルプルギスがやってくると言うのだ。

「もっと手の内を教えてくれてもええんちゃう?」

望はさらに踏み込むが、崇裕はそんな素振りは見せなかった。

 「それはぜひ俺からもお願いしたいね。濵田崇裕。」

2人が振り返れば、テルしぃ(照史)がいつの間にかそこにいた。

「どの面下げて出てきやがった…」

望は反射的にテルしぃに武器を向けるが、彼は動じない。

「おいおい、招かれざる客ってやつかな?今夜は君たちにとって、重要なはずの情報を知らせに来たんやけどなあ。」

「はぁ?」

藤井流星の消耗が予想以上に早い。魔力を使うだけじゃなく、流星自身が呪いを生み始めた。」

「誰のせいやと思ってんねん。」

「このままだとワルプルギスの夜が来るより先に、厄介なことになるかもしれへんで。注意しておいた方がいい。」

それはどういう事だ?と聞き出そうとする望に、テルしぃは言った。

「俺に聞くんやなくて、あいつに聞いたらええやん。」

テルしぃはあっけらかんと言い放つ。

「知ってんねやろ?濵ちゃん。」

けれど崇裕は、ただ黙っているだけだった。それをテルしぃは肯定と受け取る。

「やっぱな。どこで手に入れたのかめっちゃ興味深いけど…君は…」

「照史、聞くだけのことは聞いた。もう消えろ。」

そういうと、テルしぃは消えてしまった。

「流星のソウルジェムは穢れを溜め込みすぎた。早く浄化しないと取り返しの付かないことになる。」

崇裕のこの言葉の意味を、望はまだちゃんと理解していなかった。

 

退院し、すっかり元気になった重岡くんは智洋と一緒に下校していた。

「でもさぁ、神ちゃんって、帰る方角はこっちやったっけ?今まで帰り道に見かけたことないねんけど…」

「あー、ホンマは逆方向やねん。」

「え、じゃあ今日は何で…」

「シゲに話したい事があんねんけど。ええかな。」

彼らは知らない。流星が、この様子を見守っていたことに。

 

流星は感情に任せて手当たり次第に使い魔を倒していた。

彼に近づく足音がする。それは崇裕だった。

「もうソウルジェムも限界のはずや、今すぐ浄化せんと。使え。」

崇裕はグリフシードを流星に投げるが、彼は受け取らなかった。

「今度は何を企んでんねん。」

と崇裕に言う。崇裕は怒りを少し顔に出し、

「いいかげんにせえ。そんなに助けられるのがいやなんか?」

と返した。流星は言った。

「お前らとは違う魔法少女になると決めたんや。誰かを見捨てるのも、利用するのも、そんな事をする奴らとつるむんも嫌や。見返りなんて要らない。オレは自分のために魔法を使ったりしない」

「お前、死ぬで…」

「オレが死ぬとしたら、それは魔女を殺せなくなった時や。それってつまり、用済みってことやろ?…なら、それでいいねん。魔女に勝てへんオレなんてこの世界には要らない」

崇裕は流星に問う。

「なんで?俺は流星を助けたいだけやで。なんで信じてくれへんの?」

「なんでやろな。ただ何となく分かるねんな。濵ちゃんが嘘つきってこと。何もかも諦めた目をしてる。空っぽの言葉をしゃべってる。」

流星は崇裕を見た。表情が変わる様子はない。

「今やってそう。本当はオレのためとか言いながら全然別のことを考えてんねやろごまかしきれるもんじゃないで。そういうの」

「そうやって、お前はますます淳太を苦しめる」

「淳太は関係ないやろ」

「いや、何もかもアイツのためや」

言葉を失う流星。崇裕は気にせず続けた。

「鋭いな。ああ、図星や。俺はお前を助けたいわけじゃない。お前が破滅していくさまを淳太に見せたないだけや。」

崇裕は、

「ここで俺を拒むなら、どうせお前は死ぬしかない。これ以上淳太を悲しませるくらいなら、いっそ俺がこの手で…殺したるわ、藤井流星

その時、駆けつけた望から助けが入る。連接棍で崇裕を取り押さえる望。

「おい、はよ逃げろ!」

望の言葉に、流星はふらふらとした足取りでその場を後にした。

「正気か濵ちゃん、流星を助けるんやなかったんか。」

取り押さえられた崇裕は身動きがとれない。

「離せ。」

その様子に、望はある事に気が付いた。

「あー。こんな感じでとっつかまえてたら、あの妙な技も使えないってわけね。」

その言葉に崇裕は手りゅう弾を出し、歯でピンを咥える。

「…なっ!?」

とっさに退避する望。爆発し煙が消えると、そこに崇裕の姿も無かった。

 

流星は電車に乗っていた。2人の男性の会話が聞こえてくる。

「言い訳とかさせちゃ駄目っしょ。稼いできた分はきっちり全額貢がせないと」

「女ってバカだからさぁ、ちょっと金持たせとくとすぐクッダラネェ事に使っちまうからね」

「いや〜ほんと、女は人間扱いしちゃ駄目っすね。犬か何かだと思って躾けないとね」

「あいつもそれで喜んでるわけだし。顔殴るぞって脅せばまず大抵は黙りますもんね」

「けっ、ちょっと油断すると、すぐ付け上がって籍入れたいとか言いだすからさぁ、甘やかすの禁物よ?」

「ったく、テメェみてぇなキャバ嬢が、10年後も同じ額稼げるかってぇの。身の程弁えろってんだ。なぁ?」

「捨てる時がさぁ、ほんとウザいっすよね。その辺ショウさん上手いから羨ましいっすよ。俺も見習わないと…お?」

それを聞いていた流星は立ち上がり、彼らのもとへ向かった。

「なぁ、その人のこと聞かせてや。」

「はい?」

「その人、お前のこと喜ばせようとして頑張ってたんちゃうの。お前にもそれが分かってたんやろ?なのに犬と同じなんか?ありがとうって言わへんの?役に立たんと捨てんの?」

「何こいつ、知り合い?」

「い、いや…」

「この世界って救う価値あんの?オレ何のために戦ってたん?教えてや。今すぐお前が教えてや。やないとオレ…」

 

流星を探して、淳太は夜の公園を一人歩いていた。そこにテルしぃが現れる。

「淳太くんも俺のことを恨んでんのかな?」

「照史のことを恨んだら、流星を元に戻してくれんの?」

「無理やな。それは俺の力が及ぶところじゃない。」

少し間を置き、淳太は言った。

「いつか言っていた、オレが魔法少女になればすごい力が使えるって話、あれホンマなん?」

「すごいなんてのは控えめな表現やなあ。淳太くんは途方も無い魔法少女になるよ。恐らくこの世界で最強の。」

「もしオレが引き受けてたら、流星は魔法少女にならなくて済んだのかな?」

「流星は流星の願いを遂げた。それについて淳太くんには何の関係もない」

「なんでオレなんかが…」

「俺にも分からへん。はっきり言って、淳太くんが秘めている潜在能力は理論的にはあり得ない規模のものやから。」

テルしぃは続ける。

「誰かに説明して欲しいんは俺も一緒なんやで。淳太くんが力を開放すれば、奇跡を起こすどころか、宇宙の法則をねじ曲げることすら可能やろな。なぜ淳太くん一人だけがそれほどの素質を備えているのか、いまだに分からない」

「オレは自分なんて何の取り柄もない人間やと思ってた。このまま、誰のためになることも、何の役に立つことも出来ずに、最後までただ何となく生きて行くだけなのかなって。それは悔しいし、寂しいことだけど、それは仕方が無いことやなって思っててん。」

「現実はずいぶんと違うかったな。」

テルしぃは続ける。

「淳太くんが望むなら、万能な神になれるかもしれへんで。」

「オレなら、テルしぃに出来ひんことも出来るんかな?オレがお前と契約したら、流星の体を元に戻すことも出来る?」

「そんな事は造作も無いことやろな。…その願いは、淳太くんにとって魂を差し出すに足るもの?」

淳太に契約を促すテルしぃ。

「流星のためなら、いいよ。オレ、魔法少女に…」

淳太が身を乗り出し、契約を結ぼうとしたその時…テルしぃは全身を銃で撃ちぬかれた。淳太が振り返ると、そこには崇裕の姿があった。

「何も殺さんでも!!」

「淳太はいつだってそうやって自分を犠牲にする…役に立たないとか、意味が無いとか、勝手に自分を粗末にすんなや。淳太を大切に思う人のことも考えろ!」

淳太は言い返せない。

「いい加減にせえよ。淳太を失えば、それを悲しむ人がいるって、どうしてそれに気づかへんの?淳太を守ろうとした人はどうなんの?」

地面に崩れ落ち、泣きながら訴える崇裕。

「オレたちはどこかで…」

淳太は何かを思い出そうとしていた。

「オレたち、どこかで会ったことある?オレと…」

「それは…」

「ごめん。オレ流星を探さんと…」

「待って、流星はもう…」

「ごめんな」

そう言い残して走り去る淳太。

「待って、淳太!」

嗚咽する崇裕だった。

そこにテルしぃの声が聞こえてくる

「無駄なことやって知ってるくせに。懲りひんなぁ、濵ちゃんも。代わりはいくらでもおるけど、無意味に潰されるのは困るねん。勿体無いやんか。」

テルしぃは自らの死体に駆け寄り、死体をガツガツ食べてしまう。立ち上がる崇裕。

「濵ちゃんに殺されたのはこれで二度目やけど、おかげで攻撃の特性も見えてきたわ。時間操作の魔術やろ、さっきの。」

崇裕は答えない。

「何となく察しは付いてたけど、濵ちゃんはこの時間軸の人間ちゃうな。」

「照史の正体も企みも、全て知っとるで。」

「なるほどね。だから、こんなにしつこく俺の邪魔をするんやな。そうまでして、中間淳太の運命を変えたいん?」

「ああ、絶対にお前の思い通りにはさせへん。テルしぃ…いや、桐山照史

 

誰もいない駅のホームのベンチでうなだれている流星。望は流星を発見し、隣りに座る。

「やっと見つけた…。流星さ、いつまで強情張ってるん?」

「悪いな。手間かけさせてもうて」

「なんやねん。らしくないやんか。」

「別にもうどうでもよくなっちゃったからなあ。一体、何が大切で、何を守ろうとしていたのか。もう何も分からなくなった。」

流星は、穢れまみれになったソウルジェムを差し出す。それを見た望は驚いた。

「希望と絶望のバランスは差し引きゼロだって、いつだって望は言ってたよな。今ならそれが分かるわ。」

「オレは確かに何人か救いはしたけどさ…その分、心には恨みや妬みが溜まって、一番大切な友達さえ傷つけて。」

「流星、お前まさか、」

「だれかの幸せを祈った分、他の誰かを呪わずにはいられない。オレたち魔法少女ってそういう仕組やったんやなあ。」

流星は自嘲するように呟く。

「オレって、ほんまドジ…」

顔をあげた流星は泣いていた。その涙がソウルジェムに落ち、それが引き金となって、ソウルジェムが決壊する。強い衝撃が発生し、望は吹き飛ばされてしまった。同時に抜け殻である流星の肉体は衝撃波で吹き飛んでしまう。

「流星!!!!」

絶叫する望。ソウルジェムの中身はだんだんと成長してゆく。

 

テルしぃは言った。

「この国では成長途中の女性を「少女」って呼ぶんやろ?」

「だったら、やがて魔女になるキミたちのことは「魔法少女」と呼ぶべきやんなあ」

 

参考文献:魔法少女まどか☆マギカ WIKI - ネタバレ考察/台詞集/各話別第08話

いいわけ:本当は「1人は寂しいもんな…俺が一緒にいてやるよ、流星…」を書きたかったのに間違えた